弧旅 #216 (番外編) 香港、マカオ

カジノ・リスボア グランド・リスボア・ホテル アジア
いざ 決戦の地、カジノ・リスボア へ / 新馬路

最後のコイン

マカオ
タイパ島
官也街
観光客でひしめく官也街 / タイパ島

一旦 心を落ち着かせるため、

ドリンクコーナーに立ち寄って

無料で提供されるドリンクを飲んで一息入れる。

再び 最初に張っていた設定金額の安い三つの卓に戻り、

張っている人たちを遠巻きに見ていると、

地元の人なのか

貫禄のあるおばさんに話しかけられた。

賭けている人達を指差しながら何事か話しかけてくるのだが、

如何せん、言葉は広東語なので

何一つ理解出来ない。

察するに、

「あんな賭け方じゃあ、当たるもんも当たりゃあしないよ。

兄さんも そう思うだろ?」

とでも言っているのだろう。

何となく頷いてはみるものの、

おばさんは遠慮なしに延々と話しかけてくるので

さすがに気まずくなってきて、

「スミマセン、チョット良くワカラナイ。」

と英語で伝えると、相手も理解したらしく、

ようやく解放してくれた。

・・・・・・・・・・・・・・・

それにしても、あのおばさんは一体何だったのだろう。

手には買い物バッグのようなものをぶら下げていたし、

セレブといった感じのたたずまいでもなかった。

本当にスーパーの帰りにでも

寄ったというような雰囲気だ。

このカジノに何十年と通っている

ぬしのような人なのだろうか?

はたまた、実は私以外には見えていない

マカオ版の 座敷童ざしきわらしのような霊的な存在だったのでは?

負けが込んだ今の自分の状況と、

あまりに唐突な出来事に、

そんな突飛な発想までが脳裏に浮かんでくる。

それでも ちょっとした息抜きにはなったので

丁度良かったのかもしれない。


やっと少し落ち着いてはみたものの、

かと言って 必ずしも勝てるようになったわけではない。

勝負の流れとしては

明らかに下り坂なのだ。

・・・・・・・・・・・・・・・

やはりここは もう一度基本に立ち返るべきだ。

ギャンブルとは言え、

サイコロの出目は確率なのだ。

ゾロ目の出る確率は 1/36 。

パーセンテージで言えば 2.7 %だ。

つまり100回振って

ゾロ目が出るのは3回未満。

それも ピッタリ36回に1回づつ出るわけではなく、

最初の3回がゾロ目で

後の97回はそれ以外という場合もあるし、

その逆もあり得るのだ。

それでも、直前にゾロ目が出た卓よりは、

しばらく出ていない卓の方が出やすいだろうと

考える根拠にはなるし、

勝負する方としては そう信じるしかない。


しばらく ‶″をしながら観察した結果、

三つの内の真ん中の卓は

しばらくゾロ目が出ていないようだった。

ディーラーの隣りにあるスクリーンには

直近15回分ほどの出目しか表示されないが、

表示される以前の分から考えても

ゾロ目はだいぶ出ていない気がする。

恐らく過去二十数回ほどは出ていないはずだ。

ここは意を決して、

残りの2枚の内の1枚をゾロ目に Betベット

・・・しかし、出た目は 小 。

出目の流れからしても、

小、大、小、小 だから、

これと言った規則性は見られない。

そろそろゾロ目が出ても良い頃合いだとは思うのだが、

次に出るという保証はどこにもない。

残りのコインはわずか1枚。

もう一度様子を見ようかとも思ったが、

ここで ‶見″をして次にゾロ目が出てしまったら、

後で後悔するのは目に見えている。

職場の同僚や友人には、

「カジノでは負けたことがない! 大小タイサイ なら絶対に勝てる!」

と豪語してきた手前、

ここで負けて帰った日には

格好悪いどころの騒ぎではない。

そんな邪念も浮かんでくる。

・・・・・・・・・・・・・・・

色々な思いを抱きながら、

最後の1枚を 再びゾロ目に Bet。

この回、私の他に賭けているのは3組ほどで、

その前の出目もバラバラだから

盛り上がる要素は何一つない。

緊張しているのは、

恐らく 最後の賭けに出た私一人だけだろう。

サイコロのシャッフルが終わり、

ついに ディーラーが蓋を開ける。

前にいるおばさん(さっきとは違う人)の頭が視界を遮り、

出た目が確認できない。

しかし、そのおばさんが

「おおぉぉぉぉぉ!!!」と感嘆の息を漏らして、

目を見開きながら私を振り返った。

その瞬間、私も「まさか!」とは思いつつ、

直感的に何かが起こったことを理解した。

おばさんの頭越しに出目を確認する。

・・・・・・・・・・・・・・・

何と! 出目は ①①① のゾロ目!!!

・・・・・・・・・・・・・・・

さっきまでの憂鬱な気持ちが一気に吹き飛ぶ。

これまでの努力が報われた瞬間だった。


やはり ゾロ目を当てるのは珍しい事らしく、

他のギャラリーからも

ちょっとした歓声のようなものが起きた。

皆は、「適当に張ったのがたまたま当たってラッキーだったな!」

といった感じで私を見ていたが、

私にとっては 決して偶然ではない。

あくまで 狙ったうえでの当たりなのだ。

マカオ
媽閣廟
媽閣廟にて / マカオ

嬉しくて小躍りしたいくらいの気持ちだったが、

ここはあえて冷静を装い、あくまでも、

「自分でも意外だ。本当にラッキーだったよ。」

という顔で、

$1000コイン×2枚、$100コイン×5枚を

しっかり受け取った。

($100の24倍、プラス元金の$100 で$2500)

喜びを爆発させたい気持ちを抑えつつ、

意気揚々とキャッシャーへ向かった。

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