覚醒した才能
後半の初めから トルシエが動く。
FWの福田に代え本山を投入。
本山を左サイドに入れ、俊輔をトップ下へ。
中田はFWに入り 平瀬の周りを衛星的に動くよう指示。
これには 前半からマンマークに付かれていた中田がマークを引き付けて、
俊輔がその空いたスペースを使う意図もあった。
フォーメーションは 3-5-1-1。
FW 平瀬
中田
MF 本山 俊輔 酒井
稲本 明神
DF 中田浩 宮本 中澤
GK 曽ヶ端
後半3分 ゴール正面25mでのFK。
中田と俊輔両名がボールの左右に立って、
どちらが蹴ってもおかしくない状況。
最終的に中田のシュートは勢いよくゴール左の枠内に飛んだが、
惜しくもキーパーに止められる。
( これが後のFKの布石になる。)
5分、俊輔が右サイドのコーナー付近に流れてセンタリング、
平瀬のヘディングはキーパーの正面へ。
6分には中田が右に流れてマークを引き付け出来たスペースを使い、
俊輔がドリブルで切り込んで強烈なシュート。
キーパーの正面だったため得点にはならなかったが、
後半からのシステムチェンジが活きた形だ。
7分には左サイドの本山がカットインからスルーパス。
本山の投入で攻撃の幅が広がり追撃態勢が整う。
10分、またも最終ラインと中盤の間のスペースでボールを受けた俊輔が、
華麗なターンから平瀬へ浮き球のスルーパス。
これはオフサイドになるが、
トップ下に入った俊輔が徐々にその才能を発揮し始める。
15分以降も全体的に日本が押し込む展開。
カザフスタンも中田には⑯番、
俊輔にも⑮番の選手を付けて対応しようとする。
22分、稲本に代えて高原を投入し
トルシエが早い時間で最後のカードを切る。
高原と平瀬の2トップとトップ下に再び中田ヒデ、
俊輔を2.5列目に下げて、総攻撃をかける。
25分ついにスコアが動く。
俊輔のクロスがブロックされ こぼれたボールが左サイドの中田へ渡る。
右足で上げたインスイングのクロスが平瀬の頭にピタリと合い同点。( 1-1 )
勢いを得た日本は攻勢をかける。
26分、左サイドタッチライン際からの中田のセンタリングを
高原がボレーを放つも枠を外れる。
( それにしてもトップスピードから左足で正確に折り返した
中田英 の足首の強さには驚かされる。)
そして41分、センターサークル右付近でボールを受けた俊輔が
40m先に走りこむ平瀬に糸を引くような弾丸フィード。
浮き球のボールを平瀬が巧みにトラップしてゴールに突き刺し、
ついに逆転に成功する。( 2-1 )
落ち着いて決めた平瀬もさることながら、
アシストとなった俊輔のフィードは、
さしずめ レーザービームのような美しい軌道を描き、
その視野の広さと技術の高さを証明するものだった。
43分には高原が倒され
ゴール正面やや左 約20m の位置からFKを得る。
今度も俊輔と中田がボールに対峙する。
2人は何事か談笑しながらタイミングを窺い、
中田がモーションを起こす一瞬のフェイントの後、
俊輔の放ったボールは綺麗な放物線を描き
ゴールネットに吸い込まれた。
後半冒頭のFK同様、中田のシュートを警戒していた相手GKは、
完全に逆を突かれて反応できず、
俊輔の左足から放たれたボールを見送るだけだった。
これでスコアは 3-1。
数分のロスタイムの後、主審の笛が吹かれ
日本は2大会連続でのオリンピック出場を決めた。
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