場違いな2人
一度部屋に帰って今後の旅先の予約をして過ごし、
その後 少し昼寝をした。
目が覚めるともう夕方6時近くだった。
北門を出た先にちょっとした山( 385m )があって、
麓からケーブルカーが出ている。
宿のオーナーの話だと
上からドゥブロブニクの町の全景が見られて、
夕暮れ時がとても綺麗だとのこと。
しかし、ケーブルカーだと往復で120kn、
片道でも 70kn かかるらしい。
往きでケーブルカーを使って、
帰りは下り道を歩いて帰ろうかとも思ったが、
自分の中では いつの間にか、
〈 ケーブルカーを使って夕飯をスーパーで買って安く済ますか、
往復歩いて 後でレストランで豪華なディナーを楽しむか。〉
の二者択一が出来上がっていた。
昨日 港の近くのレストランで、
魚貝のリゾットを 他の観光客が美味しそうに食べるのを
盗み見てしまっていたので、
選択は断然 後者となり、
気合いを入れて 歩いて往復することにした。
しかし、実際登るとなると これがなかなか大変で
まずその登り口が見当たらない。
階段を上って行くと車道に出て、
さて、右に行こうか左に行こうか迷っているところで
突然 白人の若い女性2人組に話しかけられた。
一人は長身のブロンドで、もう一人は少し小柄な 黒髪のソバージュ。
彼女たちも登り口を探しているらしかった。
しかし、つたない英語で相談してみたところで どうにもならず、
1人で道の先の方へ登り口を探しながら歩いていると、
その2人が後ろから呼び止めてくれた。
どうやら自分が見逃してしまった細い道がその入り口らしく、
彼女たちが地元の人に聞いたのを、
私に教えてくれたらしい。
来た道を少し戻って、その小路に入ると
自然 2人の後を付いていく形になった。
しかしこの展開、実は少し面倒くさいなと思ってしまった。
道を教えてくれたのは素直に有難かったし、
2人ともなかなかの美人ではあったが、
両方とも薄手のワンピースにサンダルという姿で、
どう考えても山を登る 格好ではなかった。
途中で足でも挫いて、
それをケアする羽目になるのではないかと
要らぬ心配までしてしまう始末で、
何となく及び腰でいると、
山道を少し行ったところで2人は立ち止まって、
何故か、「 お先にどうぞ。」と
道を譲ってきた。
思った以上に石や枝が多く 道が険しいので、
登るのは諦めることにしたらしい。
私は先ほど道を教えてくれた感謝を述べつつ、
どこか安心した心持ちだった。
実際 その格好では、山道は厳しいように思えたので、
「 靴を変えるか、片道だけでもケーブルカーを使うのがいいよ。」
と尤もらしいアドバイスして
自分は先を急ぐことにした。
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