日本人バックパッカーに会う
朝早かったので、帰りがけに何か食べようかと
安そうな食堂を探していると、
日本人のバックパッカーらしき若者に声をかけられた。
相席を勧められ、色々と話しているうちに少し打ち解けてきて、
しばらく そこで話をした。
彼は マサヤ君( 仮 )といって 今現在スペインに住んでおり、
観光ビザが切れるため 一旦EU圏外に出る必要があって
観光がてらモロッコまで来たということだった。
スペインにはスペイン人の彼女と住んでいると聞き、
「 なんだ、リア充か!」と自分の中で一瞬 線を引きそうになったが、
別にリア充( 死語 )の人が 皆悪い人でもなかろうと思い直し、
せっかくなので 色々と話を聞いてみることにした。
なんでも スペインに来る前は
( 途中 何度か帰国したりはしているそうだが、)
メキシコに2年ほど滞在していたらしく、
その前は アメリカで路上生活をしていたとのこと。
なかなか ヘヴィな旅をしているらしい。
長い放浪生活のためか、どこかおおらかなところがあって、
私などよりもだいぶ人当たりが良さそうだ。
相手に対する警戒心が無いというか、
最初から全てを疑ってかかるのではなく、
相手とコミュニケーションを取りながら吟味するタイプで、
周りで起こる全てのものに好奇心を失っていない
なかなか爽やかな男という印象だ。
( 長旅をしていると これがけっこう難しくて、
旅という非日常な状態に慣れてしまうと、
徐々に好奇心が摩耗してきて、
何を見ても感動できなくなってしまうのだ。)
実際 スペイン人の彼女がいると聞いても
納得してしまうくらいの、
なかなかなイケメンでもある。
長々と話をしているうちに
場所を変えようということになり、
カスバの中でも一番大きな広場( Hamman 広場 )の一角にある
お茶屋に移動することにした。
朝食も食べないと言っていた彼だが、
そこのコーヒー代を奢ってくれた。
あまりお金が無いのかと思っていたので、
何だか悪いような気もしてくる。
留まることの無い彼の話しっぷりに 若干困惑しつつ、
もう少し付き合うことにした。
マサヤ君は 趣味で指輪やブレスレットなどのアクセサリーを手作りで加工し、
それを知り合いなどに売っているらしく、
彼が言うところの、‶ 良いシルバーと革 ” を探しに
モロッコまで来たということだった。
彼が造るアクセサリーが どの程度本格的なものなのか、
どのくらいの価値があるのかは分からないが、
それを売る相手に 自分も入れられては困るなと少し警戒しつつ、
彼の 自分の作品に対する熱意は
その饒舌さ加減から十分伝わってきた。
しかし その奇妙な熱意と言うか テンションの高さには、
少しの危うさも感じていた。
( 彼が常に ‶ ハイ ” な状態なのには ちゃんとした理由があって、
それは 会って数時間の人間でも 一目で分かる事なのだが、
ここではそれには触れないでおこう。
言ってしまうと 彼は常に
‶ キマッている ” 状態だったのだ。)
しかし、その筋の人にしては素直過ぎる気がするし、
将来はボランティアの仕事をしたいと語っていることから、
あまり枠に捕らわれない 自由な生き方をして
こうなったのだろうと考えると、
何だか憎めない奴に思えてきた。
その後、古い銀製品を見に行くという彼に付き添って、
現地のアンティーク・ショップに行くことに。
声をかけられた地元の店員に付いて行くと、
少し奥まった怪し気な家に連れていかれた。
中は薄暗く、壁一面に商品の絨毯が飾られていて、
奥の部屋には その店の店主らしき老人が待ち構えていた。
マサヤ君は 店主が持ってくるシルバーを使った装飾品を
いくつか見ていたが、
特に気に入るようなものは無さそうだった。
私もそれを待つ間、
他の店員が持ってくる絨毯を見せられたが、
もともと興味がない上、値段もそこそこするので
適当に相手をしながら待った。
マサヤ君と店主の交渉が終わるまで、
いつ後ろの扉を閉められるかと 要らぬ警戒していたのだが、
店主も店員も 強引に引き留める様子はなく、
帰る時には案外簡単に出られて 拍子抜けした。
マサヤ君が バスターミナルに向かうと言うので、
同行することにした。
時間を持て余していたのもあるが、
私も 明後日バスでフェズへ移動するので
場所を確認しておきたかったのだ。
マサヤ君は pm 3:15 のバスで
テトゥアンに向かうと言う。
テトゥアンは、昨日 タンジェからシャウエンに来る時に
通った町だ。
なんでも テトゥアンで、
自分の考える作品に見合う革を探すのだそうだ。
テトゥアン の次は フェズ に行くと言っていたので、
もしかしたら また会うこともあるだろう。
そうなれば そうなったで、
面白いかもしれない。
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