FIFAワールドカップ 思い出のBest Bout ③

FIFAワールドカップ サッカー
数々の名勝負を生んできたFIFAワールドカップ

極上のエンターテインメント

【4】デンマークの奇襲とブラジルの底力

1998年フランス大会 準々決勝 ブラジル 対 デンマーク ( 1998.7.4 )

フランス西部の地方都市ナントにある

スタッド・ドゥ・ラ・ボージョワールにて行われた一戦。

開始早々試合が動く。

ブラジル陣内ペナルティエリア近くで

デンマークの長身 FWメラー が倒されファウルを受ける。

ブラジルDF陣が壁を作る位置を確認する中、

M・ラウドルップから前方へ走り出した B・ラウドルップ へ

素早いグラウンダーのパス。

虚を突かれたブラジルが対応する前に

B・ラウドルップ はエリア内に切り込んで、

グラウンダーのセンタリングを上げると、

走り込んだ MFヨルゲンセン が合わせて先制。(2分、0-1)

ブラジルのお株を奪うマリーシア( =ずる賢さ )が生んだ、

兄弟ならではの阿吽の呼吸からのゴールだった。


成す術もなく先制されたブラジルだったが、

その後も慌てることなく、

元鹿島の MFレオナルド や磐田所属の MFドゥンガ らを中心に

ゲームを組み立てていく。

10分には早くも FWベベット のゴールで同点とし、(1-1)

26分には左に抜け出した MFリバウド の技ありチップキック・ゴールで

逆転に成功する。(2-1)

これら2つのゴールをアシストしたのは、

21歳のエース、神童ロナウド。

デンマークも反撃を試みるが、

ブラジルの堅い守備を崩せず、

FWメラー がターンからのシュートを放つも

キーパーの正面。

2-1のスコアのまま前半を折り返した。


【5】ブラジルの肝を冷やす B・ラウドルップ

ハーフタイムの時点でブラジルの2-1。

先制はされたものの、自力で勝る自分たちが逆転したことで、

ブラジルにはちょっとした油断があったかもしれない。

少なくとも 左SBロベルト・カルロス にはあっただろう。

後半開始早々再びスコアが動く。

50分、

MFヨルゲンセン が中央からの突破を試みるも

ブラジルDFの足に弾かれて、

ボールはロビングのような形で

デンマークの右サイドに流れる。

左SBの ロベルト・カルロス が背走しながら

オーバーヘッドでクリアを試みるも、

利き足ではない右足での試みは空振りに終わり、

一人フリーとなった B・ラウドルップ の前へ。

ロベカルはこれまでにも何度かこういった ‶ 軽い ” プレーを披露することがあったが、

今回は完全に軽率だった。

バウンドを冷静に見極めながら放たれたシュートは、

鋭い弾道で GKタファレル の守る ゴール右上に突き刺さった。(2-2)

喜びを爆発させるデンマークイレブン。

話題になった B・ラウドルップ の肘立てポーズもこの時披露された。

間違いなく前回王者ブラジルを

北欧の小国 デンマークが追い詰めた瞬間だった。


その後も、デンマークは互角以上の健闘を見せる。

カフー、ロベカル の両SBを積極的に上げて猛攻を仕掛けるブラジルに対し、

デンマークは献身的なプレーと

ラウドルップ兄弟の個人技で対抗する。

特にブラジルは B・ラウドルップ のスピードとテクニックに手を焼き

MFドゥンガ に至ってはサイドであっさりと抜かれ、

完全に子ども扱いされる始末だった。

そのまましばらく この攻防が続くものと思われたが、

今度はデンマークに一瞬の隙が生まれる。

そこを見逃さなかったのが、

この翌年 バロンドールを獲得することになる

ブラジルの 10番 リバウドだ。

60分、

両チーム 激しい攻め合いの中で、デンマークのDFラインの前に

ぽっかりと大きなスペースが出来る。

中盤のやや下がり目の位置で縦パスを受けたリバウドは

フリーで前を向くと、目の前の空いたスペースにドリブルで侵入し、

やや遠い位置から得意の左足を振り抜いた。

グラウンダーの速いシュートは、

名GKシュマイケル( 現代表GK カスパー・シュマイケルの父親 )の指先をすり抜け、

ゴール右隅へと吸い込まれていった。

まさに一瞬の隙を見逃さない、

リバウドの個人技から生まれたゴールだった。

その後 何とか同点に追い付きたいデンマークは、

長身を生かしたパワープレイなどでブラジルゴールに迫るも、

最後までゴールを割ることは出来ず、

試合は結局 3-2でブラジルの勝利。

ブラジルは何とか準決勝へと駒を進めた。


【6】一つの時代の終焉

グッド・ルーザーとなったデンマークは、

サポーターやメディアなど 各方面から賞賛を浴び、

この試合は大会屈指の好ゲームとして

多くのサッカーファンの記憶に残ることとなった。

期待された ロナウド は、

その後行われた地元フランスとの決勝直前に

原因不明の体調不良に見舞われ、

決勝では本来の実力を発揮出来ず、

フランスの将軍 ジダン による2発のヘディングの前に沈み、

サッカー界の ‶ キング ” として戴冠するまで

更に4年の年月を待たなければならなかった。

( もっとも、その4年間での度重なる怪我の影響と、

普段の不摂生のおかげで、

我々が当初期待していた 本物の ‶ キング ” とは少し違ってしまったが・・・。)


一方のデンマーク。

大会後、FIFAが選ぶオールスター・チーム(16名)の中に、

デンマークからは ラウドルップ兄弟 の二人が選出された。

しかしその後 二人は揃って代表引退を発表。

シュマイケル とともに築いた一つの時代は

終焉を迎えることとなった。

このフランス大会以降、

デンマークは欧州の中堅国として対戦相手から警戒されることはあっても、

主要国際大会での華々しい活躍は 今のところない。

( エリクセン など、個々に優秀な選手は出てきてはいるが。)

それでも やはり私は期待してしまうのだ。

いつの日か また あの赤いユニホームを纏った選手たちが、

悠然と強豪国に立ち向かっていく姿を。

ダニッシュ・ダイナマイトの再来を。

~ 続く ~

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