孤旅 #137 モロッコ

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夜明けの砂漠を行く / サハラ砂漠

2016 10月18日 (水) Hassi Labiad ( Merzouga )②

砂漠の夜の ボディーガード

〈 #136からの続き 〉

モロッコ
メルズーカ
サハラ砂漠
ハシラビード
砂漠の夜
砂漠のキャンプにて。光源は月明りだけ。

ひと通り 夜の砂漠の写真なども撮り終えて、

キャンプに戻り、寝支度をする。

私とヨンちゃんは、テントの外にマットを敷いて

星空の下、月を見上げながら寝ようと話していたので、

それをラシードに伝えると、

彼は 渋々といった感じで

私の分のマットレスを持って来てくれた。

すると ラシードは、ヨンちゃんに、

「 君の分のマットレスは こっちにあるよ。」と

テントで囲まれたキャンプの外側へ

ヨンちゃんを連れ立って行ってしまった。

その言い回しが どうにも不自然だったのと、

前々から ラシードの彼女への接し方に

ただの親切とは違うものを感じ取っていた私は、

少し心配になった。

案の定、しばらくたっても

ヨンちゃんはなかなか帰ってこない。

他の国に行った時にも感じたことだが、

彼ら現地ガイドの

性に対する異常なアグレッシブさは知っているし、

そういった話をいろいろな女性から

嫌というほど聞いている。

現に昨日 マサヨさんと話した時も、

割と化粧っ気のない淡白な印象の彼女ですら、

( と言うのも だいぶ失礼な話だが・・・、)

フェズの皮鞣し工場では

現地ガイドにしつこくアタックされたと聞いたばかりだ。

思えば 今日一日を通して、

ラシードのヨンちゃんに対する態度にも

そういった様子が いくつも見受けられたが、

まぁ 若い者同士、好きにすれば良いくらいに思っていた。


しかし、これがセクハラや、

強制的な行為といった類となれば

話は別だ。

ラシードは 基本的に悪い奴ではないと思うが、

どうにもノリが軽すぎるし、

プレイボール風のチャラいところがある。

強制とまではいかなくとも、

準強制、半ば強引に行為を迫られて

拒むことが出来ない女性もいると聞く。

日本を遠く離れた こういった地では、

それはそれで仕方のない事かもしれないが、

少なくとも 私がいるこの場で

そういった被害者を出させるわけにはいかない。

そう思い立ち、

キャンプの外へ出て 二人を探すことにした。

本音を言うと、

そこには少しの 嫉妬があったかもしれない。

ヨンちゃんは利発で可愛らしい女の子で、

言葉がいまいち通じなくても

気さくに話もしてくれる。

しかし、今回に限っては

使命感と言うか、責任感の方が強かったように思う。

まるで、親戚のおじさんか

年の離れた兄弟にでもなった気分だ。


手遅れになってはまずいと、

テントに囲われたエリアの外に出て

声が聞こえはしないかと

耳をそばだて、神経を研ぎ澄ませた。

少し離れた 井戸のある辺りに行ってみるが

気配がない。

引き返して 昼間皆で過ごした

休憩小屋まで戻ってくると、

ちょうど 二人が、

さっき月を見に行った丘の方から戻ってきたところだった。

私は 平静を装いながら、ラシードに、

‶ Do you have a water ?( 水無い?)”

と聞くと、

彼は意外にも、素直に隣りのキッチンがある建物の方に

水を取りに行ってくれた。

小屋の中を見ると、

真っ暗な中に敷かれたマットレスの上に

ヨンちゃんが一人 ポツンと座っていた。

おそらく、ラシードが

「 マットレスならあるけど、ここに敷いて寝ると気持ちが良いよ。」

とか何とか言って 彼女を誘い出したのだろう。

私は彼女に向かって、

‶ Are you OK? ” と聞いた。

すると、彼女も、

‶ I ‘m OK ! ”

と答えた。

ラシードが帰ってくるまでの短い会話だったが、

何となく彼女も 私に会えてホッとしている様子だった。

ラシードが水を持って帰って来た。

彼に礼を言った後、ヨンちゃんに、

「 ここで寝るつもりなの?」

と聞くと、

「 ノー。」との返事。

私はもう一度 ラシードに礼を言うと

テントの方へ戻った。

すぐ後にヨンちゃんも付いてきたので

やっと ひとまず安心することが出来た。


もしかしたら 彼女も、

ラシードに対し 満更でもない気持ちがあったのかもしれない。

だが、それは本人に直接聞いてみないと分からない。

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サハラツアー
月
砂漠に浮かぶ月。周囲も明るみだす。

ただ、それを聞くことは無いから

一生分かることは無いだろう。

だが、彼女が、

何となく抵抗出来ずに 奴に連れて行かれたのだとしたら、

私の取った行動は 一社会人として当然のことであって、

正当化されるべきだと思うし、

そうであったと信じたい。

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