孤旅 #137 モロッコ

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夜明けの砂漠を行く / サハラ砂漠

星空の下で寝る

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サハラツアー
夜明け前 キャンプを後にする一行 / サハラ砂漠

無邪気なヨンちゃんは、その後も

「 デザートフォックスの鳴き声が聞こえた。」と言っては、

何度か私をキャンプの外へ連れ出した。

すると、なぜか 休憩小屋にいたラシードも

その都度顔を出して、

「 どうしたの?」とか、

「 ここにはいないよ。」

などと、声をかけてくる。

【 これはいよいよ チャンスを窺っているな 】と、

私は彼女が外へ出て行く度に、

彼女のボディーガードよろしく

同行せざるを得なかった。

最後には さすがのラシードも呆れ果て、

我々を置いて休憩小屋の方へ戻って行って

姿を見せなくなった。

・・・・・・・・・・・・・・・

残されたヨンちゃんと私の二人、

いるとも思えないデザートフォックスを探しながら

夜の砂漠を彷徨っていると、

ふと 疑問が湧いてきた。

「 この夜中に いったい私は何をしているのだろうか?」

これまでのことは ただの思い過ごしか、

全くの徒労だったのかもしれない。

それでも やはり、

このうら若き乙女を、異国の地の果て、砂漠の真ん中で

放っておくわけにはいかなかった。

飢えたオオカミが、喉を鳴らしながら

夜通し獲物を狩るチャンスを窺っているのだから・・・。


それに、彼女と二人で過ごす砂漠の夜は、

なかなかロマンチックと言えなくもなかった。

私があと一回りくらい若ければなどとも思うのだが、

そんなことは想像したところで仕方がない。

何となくヒロイックな気分になれただけでも

良しとすべきだろう。


ようやく落ち着いたところで、

二人そろって 各々の敷かれたマットレスの床に就いた。

しばらくして ウトウトとしてくると、

ヨンちゃんは、

「 寒くなってきたから、やっぱりテントの中で寝るわ。」

と言い残し、

自分のテントに戻って行った。

星空を眺めながら寝ようと言い出したのは

彼女の方だったので、

何だか 一人取り残されたような気分になったが、

依然 月は綺麗に空に浮かんでいるし、

毛布もあるので さほど寒さを感じなかったこともあり、

私はこのまま ここで寝ることにした。

それに今いる寝床は、テントに囲まれたキャンプのほぼ中央付近だから、

仮りに、ラシードが変な気を起こして

ヨンちゃんのテントに迫ろうとしたとしても、

声や音で気付くだろうから

簡単には近付けないだろう。

私はまさに プロのボディーガードの心境だった。

夜の終わり ホテルへ帰る

だいぶ時間が経ち 目を覚ますと、

高い位置にあった月は

反対側の空の低い位置へ移っていた。

目覚めはしたが、

毛布をかぶったままの態勢で しばらく佇む。

この時間、他の者は 皆テントに籠っていて、

ここには 私以外の者は誰もいない。

( ラシードも結局テントの中で寝たようだ。

それでは、昨晩あんな時間まで休憩小屋にいたのは

いったい何だったのか?

やはり どうも釈然としない。)

街灯も窓明かりもない、

月明りだけの空間に 一人でいるというのは

なかなか乙なものだった。


次第に空が明るみ出して

皆が起き始めた。

7時過ぎには 身支度を整えて

皆で揃ってキャンプを後にした。

ラシードは、言葉にこそ出さないが

私に対してどこか不満げだった。

おそらく、自身の色恋に横槍を入れてきた、

( それが果たして 純粋に色恋と呼べるかは疑問だが、 )

私のことが 気に入らないのだろう。

だが 私からすれば、

「 そういうことは 私がいないところでやってくれ!」

と言いたいところだ。


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砂漠の夜明け
砂漠の日が昇る / サハラ砂漠

出発して 少し行った丘の上で

朝日が昇るのを待つ。

太陽に照らされて、

砂漠の無数の起伏が 徐々に赤く染まってゆく景色は、

壮観だった。

写真を撮り終え

ラクダに乗って昨日来た道を帰る。

今度は休憩を挟むこともなく、

8時半には宿に到着した。

用意されていた朝食を済ませると

各々 部屋へと戻った。


ラシードと小アリとも

ラクダを降りたところで別れた。

彼らは ほぼ毎日あのキャンプに行くということだから、

また新しい客を連れて

今日もあの道を歩くのだろう。

そう考えれば、

ラシードには いくらでもチャンスが巡ってくるだろうから

( もちろん 強制的なのは良くないが・・・。)

今回くらい邪魔をしたところで

恨まれることもないだろう。

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砂漠の日の出
辺りが徐々に赤く染まっていく / サハラ砂漠

ラシードも、一応私に対しては

客とガイドという態度を崩さなかったから、

案外悪い奴ではなかったのかもしれない。

ただ、今回だけは相手が悪かった。

とりあえず、こうして 無事 私のサハラツアーは終了した。


1日の歩数:12658歩(9.7km)

1日の出費

食費

全てツアー費用込み

その他

交際費:450DH(サハラツアー)

合計 約¥4725

1DH=¥10.5 *当時のレート

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