ロンドン中央郵便局

ベイカー街から地下鉄で一気にロンドン・ブリッジ駅まで移動し、
ロンドン塔とタワーブリッジへ行ってみる。
ロンドン塔の入場は £25 と
これまた入るのを躊躇してしまう値段だ。
タワーブリッジも上層まで登れるらしいが、
こちらは £9 で迷うところ。
ただ橋の上の遊歩道を歩くのに
£9 はもったいない気がしてきて、
結局どちらも入場は見合わせることにした。
財布の事情もある。
そういちいち入場している訳にはいかないのだ。
再び地下鉄に乗って、
今度はトラファルガー広場まで移動する。
チャリング・クロス駅を出ると、
トラファルガー広場はすぐそこだ。
何故今回ここに来たかと言うと、何と言ってもそれは
ロンドン中央郵便局を訪れるためだ。
ロンドン中央郵便局。
ガイドブックにも乗っていない
何という事のない小さな郵便局。
しかし私を初め、沢木耕太郎著の一大旅行記
『 深夜特急 』を愛読する者なら
すぐにピンと来ると思う。
作中の ‶ 私 ” こと沢木耕太郎が、
一年に及ぶ放浪の旅の末に辿り着いたゴール地点が
ロンドン中央郵便局である。
ここから友人宛てに電報を打つため
‶ 私 ” ( 沢木耕太郎 )は、
インドから中央アジア、中東を経てヨーロッパを横断し、
はるばる旅を続けてきたわけだ。
元はと言えば 私の旅も『 深夜特急 』に感化されて始まったものだった。
それも4年前、資金も底を突き
一度は断念してミラノから日本へ帰らざるを得なかったことを考えれば、
2011年6月 北京を皮切りに出発して以来
5年越しでの聖地巡礼ということになる。
一昨日トラファルガー広場を訪れた時は
そんなこともすっかり忘れてしまっていたが、
ロンドンで まず真っ先に訪れるべきはこの場所だったのだ。
果たして トラファルガー広場から少し北東に入った
ウィリアムⅣ通り沿いにその郵便局はあった。
昨日書いておいた家族や友人宛ての3通のハガキを持って
いざ向かわん!
建物自体それ程大きくないと聞いてはいたが、
‶ 中央郵便局 ” と言うからには
それなりに由緒ある建物を想像していた。
しかし実際は 建物も小さいうえに内装も外観も割と新し目で、
日本にもある一般的な郵便局とほとんど変わらなかった。
訪れた記念にここからハガキを出そうと
番号札を取って待っていると、
親切な(この場合 ありがた迷惑な)女性局員に、
「 ハガキなら切手をここで買えるわよ。」と
自分で買える切手の販売機を案内された。
有難くない助言を受け、促されるまま買った切手をハガキに貼って
海外行き用のポストに投函した。
何か劇的なものを期待していたのだが
何とも味気なかった。
情緒の欠片も無い。
用事も済んだので 外に出て外観の写真だけでもと思い、
スマホに数枚写真を撮って収めた。
他に写真を撮っている者など誰もいない。
おそらく私のような日本人の観光客が
これまでにも同じように写真を撮っては、
現地の人達から奇異な視線を向けられてきたことだろう。
マレーシアのジョホールバルにある
ラーキン・スタジアムに行った時も 似たような感じだった。
( ラーキン・スタジアムは1997年、
サッカー日本代表が初めてワールドカップ出場を決めた、
日本サッカー史にとって歴史的な場所。)
しかしこれで良いのだ。
自分や旅を愛する一部の人間にとっての聖地である
この郵便局を訪れることが出来て、
とても満たされた気分だ。
(*尚2022年8月現在、
この中央郵便局はすでに移転もしくは退去されていて、
残念ながらこの場所には存在していない模様。)
その後、近くにあった公衆電話ボックスに入って
『 深夜特急 』ラストシーンの真似事をしてみる。
有難いことに ここロンドンでは、
未だに赤色のクラシックな電話ボックスがあちこちに残されている。
しかし もう一度確認のためタブレットを開いて
ラストシーンを確認してみると、
最期に出てくる電話ボックスはトラファルガー広場のものではなく、
リージェント通り( Regent St.)のものであることが分かった。
最終章はしばらく読んでいなかったので、
記憶が混乱していたようだ。
そこで私も リージェント通りまで移動し、
戦争記念塔とナイチンゲールの像のある交差点近くの
電話ボックスの一つに入って、
再度「 我到着せず 」( WARE TOUCHAKU SEZU )
とダイヤル( ボタン )を打ってみた。
ちなみに中央郵便局を出た時からイヤホンのBGMは
井上陽水の『 積み荷のない船 』(ドラマ版『 深夜特急 』のテーマ曲)だ。
これで40年ほど前に沢木耕太郎が辿ったルートを

自分なりに再現出来た訳だ。
大きな達成感を得て 近くのコスタコーヒーに入り、
カプチーノを飲みながら
もう一度最後の場面だけを読み返し、
余韻に浸った。
これでロンドンに思い残すことはなさそうだ。
しばらくまったりした時間を過ごした後、
宿に帰って洗濯をし、簡単な夕食を取った。
忙しくも とても充実した一日だった。
1日の歩数:26349歩(20.2km)
1日の出費
食費
朝:なし(朝食付き)
夕:£5(トマトのラビオリ)
その他
ホステル:£16.5
交通費:£9.3(地下鉄、バス)
雑費:£16.1(切手£3.2、ストラップ£2.5)
合計 約¥6097
£1=¥130*当時のレート

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