FIFAワールドカップ 思い出のBest Bout ②

FIFAワールドカップ サッカー
数々の名勝負を生んできたFIFAワールドカップ

 天国と地獄

【2】へスラー と レチコフ

後半 開始早々、ドイツが畳みかける。

48分、

DFからのロングフィードのこぼれ球が

ブルガリアのペナルティエリア内の FWクリンスマン に渡り、

MFレチコフ に倒されドイツがPKを獲得。

ゲルマン魂の具現者とも言える

キャプテンの マテウス が冷静に決めてドイツが先制する。(0-1)

その後もドイツの猛攻は続く。

再び MFへスラー が左サイドから仕掛け、

マイナスのボールを走り込んできた MFメラー へ。

得意のミドルシュートは左のポストに嫌われるも、

跳ね返ったボールをベテラン FWフェラー( 可愛い髭がトレードマーク )が押し込んだが、

これはシュートを放った時のポジションがオフサイド位置で

ノーゴールの判定。


このシーン、

強烈なミドルシュートを放った メラー もさることながら、

それをお膳立てした へスラー のプレーが光った。

相手左サイドの大きく空いたスペースに走り込み、

ドリブルでDFを十分引き付けてからの

打ってくださいとばかりのラストパス。

3人、4人交わしてゴールを決めるといった選手ではなかったが、

豊富な運動量と絶対的な1対1の強さという特徴を生かした、

まさに へスラー の真骨頂とも言えるプレーだった。


しかし このゴール取り消しから

流れがブルガリアに傾く。

もともと高齢化が懸念されていたドイツが、

アメリカ・ニュージャージーの暑さに全体の運動量が減っていく中、

徐々にブルガリアが息を吹き返していく。

75分、

ブルガリア がペナルティエリア付近でフリーキックのチャンス。

ストイチコフ の左足から放たれたボールは、

綺麗な放物線を描き、

GKイルクナー の守るゴール右へ吸い込まれていった。(1-1)

続く78分、

ブルガリアが右サイドから攻め込み、

MFヤンコフ が巧妙な切り返しからクロスを上げる。

ゴール前にいたのは

先程不用意なファールでPKを献上してしまった

ブルガリア MFレチコフ と、

いまいち調子の上がらないドイツチームの中、

一人気を吐いていた MFへスラー。

178cmと上背のあるレチコフに対し、

へスラーは166cmの小兵。

絶妙なタイミングでクロスに走り込んだ レチコフ に前に入られ、

身長でも劣る へスラー は、

身体を投げ出して競ったものの敵わず、

ゴールに吸い込まれるボールを見送るしかなかった。

優勝候補ドイツ、ブルガリアにまさかの逆転を許す。(2-1)


是が非でも追いつかなければならないドイツ監督 ベルティ・フォクツ は

終盤疲れの見えた へスラー を下げ、

左足クロスのスペシャリスト DFブレーメ を投入。

パワープレー気味のロングフィードで見せ場を作るも

ブルガリアの牙城は崩せず、

試合は2-1のまま終了。

ブルガリアは大会屈指のアップセットを成し遂げるとともに、

同国史上初のベスト4進出を果たした。


ストイチコフ のワンマンチームと目されていたブルガリアだが、

今大会ベストイレブンに選出された バラコフ、

決勝点を決めた レチコフ などタレントを揃え、

準決勝で ロベルト・バッジョ 率いるイタリアに敗れるも

今大会の台風の目となった。

エースとしてチームを率いた ストイチコフ は

大会得点王に輝くとともに、

この年のバロンドールを獲得。

敗れたドイツは高齢化を指摘されるが なかなか世代交代が進まず、

続く96年の EURO を制するも、

その後長い低迷期に入っていく。


この一戦で殊勲の決勝点を挙げた ブルガリア MFレチコフ は

1試合の中でまさに天国と地獄を味わうことになった。

自らのファウルでPKを献上した後、

試合終盤で逆転のゴールを決めて見せた。

サッカーではよくある話だが、

それがワールドカップの大舞台となれば、

喜びもひとしおであっただろう。


それに対し、我が へスラー の胸中や如何に。

ドイツの攻撃を牽引し

次々とチャンスを演出し続けたが、

目の前で ストイチコフ に

自身の十八番( おはこ )を奪うようなフリーキックを決められ、

マークしていた レチコフ にゴールを奪われ、

最後は戦術的な交代とは言え

終了を待たずにピッチを後にした。

しかし フットボールは続く。

前述したように、2年後に行われたEUROにて、

ドイツは久々にヨーロッパ王者へと返り咲く。

アメリカ大会以降、徐々に力を落としていくことになる へスラー は、

不調を囲い、活躍する場面こそ少なかったが、

決勝では途中から投入され、

延長戦での ビアホフ のゴールデンゴールを

同じピッチ上で目撃し、

その喜びをチームメイトと共に味わうことになる。


決して派手な選手ではないが、

観る者を魅了したドイツの「 小さな巨人 」へスラー。

フットボール史を振り返る中で、

そこまで触れられる機会は無いかもしれないが、

彼には彼のストーリーがある。

天才肌ではなかったが、

それ故 つい応援したくなる。

私の大好きな選手だ。

~ 続く ~

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