FIFAワールドカップ 思い出のBest Bout ④

FIFAワールドカップ サッカー
数々の名勝負を生んできたFIFAワールドカップ

フットボールのレッスン

【4】圧巻の ジダン

2006年ドイツ大会 準々決勝 ブラジル対フランス

( 2006.7.2 Deutsche Bank Park =フランクフルト) 

1998年大会決勝以来のワールドカップでの再戦となる両チーム。

1998年の一度目の世界一から、

00年のEURO制覇、02年のチャンピオンズリーグ優勝など、

数々の伝説を作ってきた ジダン が引退の花道を飾るのか、

FCバルセロナ でチャンピオンズリーグを制したばかりの ロナウジーニョ が、

自身が主役のチームでワールドカップも制し、

真のフットボールの君主たりうるのか。

新旧ファンタジスタ対決としても注目が集まった。

他にも、硬いDFで知られるフランスが、

ブラジルの『 カルテット・マジコ 』をどう抑えるのか。

ロナウド 対 アンリ のストライカー対決など 見所も多く、

ベスト8で当たるのが惜しい

世紀の一戦に世界中が刮目していた。


試合開始早々から ジダン が魅せる。

中盤でボールを受け、

バスケットボールのピボットのような体制でのボールキープから反転、

次の瞬間には右足でボールを跨いで相手をかわす。

まだ序盤ではあるが、

ジダン のコンディションの良さを感じさせるプレーだった。

試合前半は一進一退の攻防となったが、

徐々に ジダン を中心として

フランスがペースを掴んでいく。

ジダン は、高度な足技を駆使しつつ、

独特のリズムでゲームを作っていく。

足裏を巧みに使ったボールキープ、

左右両足でのシザース、シャペウ、キックフェイント、

身体のあらゆる部分を使ったトラップ、

ヒールキック、果てには得意のマルセイユ・ルーレットと、

まさに ‶ 技のデパート ”と言った状態で、

ブラジルを翻弄した。

DFやボランチの選手に加え、

前線の カカ や ロナウド までが ジダン のボールを奪いに行くが、

寸でのところでかわされてしまいボールを奪えない。

まるで数秒先が見えているかのように振る舞うその姿は、

まさにピッチ上の ‶ 王様 ” 。

まるで、「 サッカーはこうやってプレイするんだよ。」と、

ブラジル代表の選手たちにレクチャーを施しているかのようだ。

前半終了間際にも、

中盤から2人をかわした ジダン が

MFヴィエラ にラストパス。

あわや決定機という場面を作り出す。

しかし両チーム決定力を欠き、

前半を0-0で折り返す。


後半ついに試合が動く。

57分、

左サイド深い位置でフランスがFKを獲得。

キッカーは ジダン。

ゆったりっとしたフォームで逆サイドに挙げられたボールは、

完全にフリーだった アンリ の右足にピタリと合い、

ブラジルGKジダ が守るゴールに突き刺さった。

フランスが先制。(0-1)

不思議なことに、アンリ はこれまで代表で ジダン のアシストからの得点が無く、

今回が ジダン からの初めてのアシストとなった。

ブラジルは時折り ロナウド が単独での突破を試みるも不発に終わり、

頼みの ロナウジーニョ の動きにもいまだにキレが無い。

終了間際、ブラジルに千載一遇のチャンスが訪れる。

フランスのペナルティエリアやや外側で

直接フリーキックのチャンスを得たブラジル。

キッカーはもちろん ロナウジーニョ。

今までの不調を覆し、

ここで同点ゴールを決めればすべてが引っくり返る。

歴史が ジダン から ロナウジーニョ 動く。

そんな重要な場面だったが、

ロナウジーニョ の蹴ったボールは

ゴールバーの遥か上に外れていった。

これと言った決定的な反撃も加えられず、

ブラジルは無得点のまま試合終了のホイッスルを聞くこととなった。

フランスも終盤、前述のFKの場面以外は危なげない展開で、

またもやワールドカップの大一番で、

ブラジルを倒すという快挙をやってのけた。


それにしても ジダン だ。

この試合の ジダン ほど、

一人でゲーム全体に影響を及ぼす選手を

私は見たことが無い。

自分のチームメイトどころか、

まるでピッチに立っている22人すべてを操っているかのような

錯覚すら覚える出来だった。

マラドーナ は一瞬を切り裂いて、

劣勢をひっくり返してしまうが、

ジダン はゲーム全体を掌握し、

決定的なゴールやアシストが無くても

自然と自チームを勝利に導いてしまう。

すでに34歳。

大会後すぐ引退をする選手とは思えないほどの

ゲームへの影響力だった。

若しくは、引退間近だからこその

最後の眩いばかりの輝きだったのかもしれない。

大会前から ロナウジーニョ の時代が来ると言われていた。

ここ数シーズンは以前ほどの輝きが見られなかった ジダン だったが、

いまだ彼の時代は続いていたのだ。

そう、コンディションさえ万全であれば・・・。


その後、準決勝でポルトガルを退けたフランスは、

決勝でイタリアと対戦。

ジダン はこの試合の先制点を落ち着いたPKで決めるも、

延長後半、イタリアDF マテラッツィ への暴力行為により退場となり、

自身2度目の世界制覇の道を断たれることになる。

謙虚な物腰の内側に 常に狂気を持ち合わせていたジダン。

そんな彼だからこそ、

観る者を惹きつけてやまない魅力を放っていたのかもしれない。

*ジダン は決勝前の記者投票により、

この大会のMVP( ゴールデンボール)に輝いている。

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