私的 ベスト・バウトをご紹介
これまで数多の名勝負が繰り広げられてきた FIFAワールドカップ。
第1回のウルグアイ大会から始まって、
今回のカタール大会は22回目を数えるが、
その中から 私が個人的に記憶に残っている試合『 ベスト5 』を、
振り返っていきたいと思う。
⑤ 2018年 ロシア大会 クロアチア × イングランド ( Semi Final )
【1】『 クロアチアのクライフ 』
クロアチアの生ける伝説、
ルカ・モドリッチ。
今年37歳( 2022年12月現在 )を迎えた彼を、
初めてメディアで見たのは だいぶ昔の事だった気がする。
何せ ずっとヨーロッパの第一線で活躍しているイメージがある。
記録によると、2006年に代表デビュー。
ドイツ大会の日本戦で本大会初出場。
( 日本が GK川口 のPKストップで引き分けた試合。)
確か大会前の事前番組で 日本の対戦国を特集していて、
20歳の新鋭 モドリッチ をして、
ドリブルが得意な『 クロアチアのクライフ 』
と紹介されていたのを思い出す。
この時は、『 クロアチアのクライフ 』はさすがに言い過ぎでは・・・
というのが第一印象だった。
クライフ は 言わずと知れたオランダのレジェンド。
決してドリブルが上手いだけの選手ではなく、
ポジションに縛られずピッチ全体を掌握しながら
神出鬼没にプレーする全能性こそが彼の特徴なので、
ただテクニックがあるというだけでは
誇大広告ではないかと思ったのだ。
実際のところ、『 クロアチアのクライフ 』の呼び名は、
モドリッチ の見た目が クライフ に少し似ているという理由もあったようで、
モドリッチ 自身が世界的に認知されるようになって以降、
ほとんど聞かれることはなくなっていった。
しかし、あれから15年以上が経って 改めて思うに、
『 クロアチアのクライフ 』、
これほど彼のプレーを的確に捉えた表現も
無いのではないだろうか。
ピッチ全体を掌握し、神出鬼没にフィールドを走り回り、
攻守に決定的な働きをする。
クライフ に比べて守備の比重が高く
泥臭いプレーも多いが、
柔らかいボールタッチや、華麗なアウトサイドキックは
本家にも負けてはいない。
そしてチームへの絶対的な影響力。
彼こそ、『 クロアチアのクライフ 』
そのものと言っても良いのではないか。
まさに リヴィング・レジェンド( 生ける伝説 )だ。
【2】ミラクル・クロアチア
人口400万人の小国 クロアチア。
建国間もない1998年フランス大会で3位に輝いて以降、
国際舞台で目立った活躍は無かった。
あくまでダークホース的存在。
しかし、東欧のブラジルと呼ばれた旧ユーゴ時代から
有望なタレントには事欠かず、
いつの時代にも優秀な選手を輩出し続けてきた。
このロシア大会も、MFモドリッチ を筆頭に、
FCバルセロナ でも気の利いたプレーで攻守に活躍する MFラキティッチ、
左サイドからのドリブルでチャンスを作り出す MFペリシッチ、
闘志溢れるプレーで守備でも貢献する 長身FWマンジュキッチ など、
特に中盤より前のポジションに計算出来るタレントを揃え、
粘り強い闘いで勝ち進んできた。
グループリーグを3戦全勝でトップ通過。
2戦目では優勝候補のアルゼンチンに
3-0で勝利し 世界中を驚かせた。
特に モドリッチ が決めたスーパーミドルは、
彼が、現在世界最高水準のミッドフィールダーであることを証明する、
見事な一撃だった。
しかし、順調だったグループステージとは対照的に、
決勝トーナメントでは苦戦を強いられ、
薄氷を踏む思いでの勝ち上がりとなった。
トーナメント初戦でデンマークを延長PK戦の末 何とか退け、
2戦目の地元ロシアとの対戦では、
2-2のシーソーゲームを これまたPK戦で制し、
何とか準決勝まで辿り着いた。
ここまでは対戦相手に恵まれた感もあったが、
準決勝の相手はサッカーの母国イングランド。
自国リーグの成功とユース年代からの地道な育成の成果が実りつつあり、
エースFWハリー・ケイン を初め、若手の有望株が目白押しの、
古豪復活を印象付けるサッカー大国だ。
クロアチアもスタメンの顔触れは遜色ないが、
層の厚さで言えば1枚も2枚も上の相手だ。
ワールドカップも最後は総力戦。
チーム力の差がそのまま勝敗に直結する。
層が薄いが故にモドリッチ、ラキティッチ、ペリシッチ など
ベテランがフル稼働を強いられ、
しかも2戦連続で120分プラスPK戦という消耗戦。
年齢的にも、体力的にアドバンテージのある
イングランド優勢との声が多かった。
しかし、ノックアウト・ラウンド3戦目となっても
東欧の小国 クロアチアの勢いは衰えず、
再び世界中のサッカーファンに
驚きを与えることになるのだ。
まさに、ミラクル・クロアチア だ。
コメント