セヴィージャFC × デポルティーボ・アラベス( 後半 )

後半もしばらくは無得点の状態が続いたが、
58分に好調の MFナスリ が負傷退場してしまう。
続いて61分、セヴィージャは、
FWビエット に替えて ブラジル代表経験もある FWガンソ を投入。
攻勢を強める。
スコアが動いたのは 74分。
前半から 右45度の角度に何度か抜け出し、
チャンスを作っていたセヴィージャ FWベン・イェデル が
右足でキーパーの足元を破った。( 1-0 )
しかし、試合終盤アラベスが追いつく。
84分にアラベス DFラグアルディア が同点ゴール。( 1-1 )
セヴィージャディフェンスのちょっとした隙を突いたもので、
楽観ムードだったスタジアムは一瞬にして静まり返った。
このままドローで終了かとも思われたが、
終了間際の90分にセヴィージャに
勝ち越しのゴールが生まれる。
決めたのは、またもや FWベン・イェデル。
左からのマイナスのクロスにきっちり合わせて
この日2点目のゴール。( 2-1 )
スタジアムのボルテージは最高潮に達した。

隣りの席のおばさまたちも 飛び上がって喜んでいる。
試合はそのまま終了。
見事ホームのセヴィージャFCが 2-1のスコアで
デポルティーボ・アラベスを下した。
終了の笛を聞くと同時に
隣りのおばさんに形ばかりの挨拶をして
席を立った。
スタジアムの外に出て ファンショップを冷かし
帰ろうとしたところ、
選手用のバスの出待ちしている一群に気付いた。
そのまま通り過ぎても良かったのだが、
選手たちを生で見られることと、
ナスリ が負傷したにもかかわらず
出番の回って来なかった 清武 に
ちょっとしたメッセージを伝えられたらと思い付き、
その場に残ることにした。
手元にあったスケッチブックに
「 清武 次こそ! !」 とメッセージを書いた。
マジックペンがないので、
ボールペンで何度もなぞって太い文字にして、
それを頭上で掲げる。
漢字が珍しいのか、周りの地元民たちが
物珍しそうに私の書いた文字を見ている。
私はそんなスペイン人たちに対し、
「 これの意味!? ‶ Kiyotake , Vamos( がんばれ )” さ!」
と 説明してあげた。
しばらくすると 監督のサンパオリ がやって来て
バスに乗り込んで行った。
出来る事なら 何で 清武 を出さなかったか聞いてみたかったが、
もちろんそんな時間も言語力もない。
続いて何人かの選手がやって来ると、
周りのサポーターからはちょっとした歓声が上がったが、
私には誰が誰やら分からない。
最後の方に、髪を金色に染めた ナスリ が目の前を横切ったが、
写真は撮らなかった。
携帯の充電が切れかけていたからだ。
せっかく写真を撮るなら 清武 が現れた時に使いたかった。
清武 の姿を探すが、
いつまで待っても姿が見えない。
最後のスタッフらしき人物が乗り込むと、

バスの扉が閉まり出発してしまった。
もしかしたら清武は怪我か何かでチームに帯同していなかったか、
早々にバスに乗ってしまっていたのかもしれない。
残念だった。
扉が閉まった後も、
私はバスが行ってしまうまで スケッチブックを掲げ続けた。
バスの中からでも 清武 がメッセージを目にして、
少しでも励みにしてくれればと思ったからだ。
自分の後から加入してきたスター選手にポジションを奪われ、
しかも、その選手が負傷しても
出番がやって来ない。
そして 自分抜きでもチームは勝っている。
これほど悔しいことも無いだろう。
次元こそ違えど、
私にも 同じような経験がある。
と言うか、そんな経験ばかりと言ってもいいくらいだ。
やってもやっても結果が出ずに 周りに追い越されていくのは、
不安だし 本当に悔しいものだ。
だからこそ 清武 に言ってやりたかった。
「 必ずチャンスは来る!」と。
バスは行ってしまったが、
そんな思いを胸に その場を後にした。
* 後から知ったのだが、
この日 清武 は日本代表として
アジア最終予選のメンバーに招集され、
日本に帰国していたらしい。
道理で姿が見えなかったわけだ。
そう言えば、メッセージを掲げている時、
後からやってきたおじさんが何やら乱暴に
私に呼び掛けていたのを思い出した。
おそらく、
「 そんなことしたって、今 清武 はここにいねーよ!」
とでも言っていたのかもしれない。
( その時は、アジア人ヘイトの嫌なおじさんだと
自然にやり過ごしていた。)


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