
2025 4月16日(水)Hong Kong ②
徒労感の理由 (3日目)Part②

様々な広告がコーティングされているのも見ていて楽しい。
( Part①からの続き )
モンスター・マンションからの帰り。
中環 地区の 銀行街という停留所でトラムを降りて、
再びスターフェリー乗り場へと向かう。
スターフェリーには上層デッキと下層デッキがあり、
せっかくなので今まで乗ったことのない
上層デッキに乗ってみる。($5=約92円)
多少 景色は良いが、そこまでの違いは感じられず、
あっという間に九龍半島側に到着。
ジャッキー・チェン 繋がりで、ターミナル近くの
1881Heritage という商業施設内にある
昔の水上警察本部の建物(映画『プロジェクトA』に登場)を眺めて写真に収めた後、
メトロで 油麻地駅 まで移動。
歩いて宿に戻り、一息つくことにした。

イギリス式の建築様式が歴史を感じさせる。 / 尖沙咀
シャワーを浴び、
少し落ち着いたところでベッドに横になる。
モンスター・マンションから中環に戻る際の
あの徒労感は一体何が原因だったのだろう・・・。
せっかく長期休暇を取って
海外まで遊びに来ているのに、
なぜか心が落ち着かない。
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〈 海外の街を一人であちこち出歩いて、自分の見たいものだけを見る。〉
そういったことに憧れて今までも旅を重ねてきたし、
だからこそ今の自分があるはずなのだが、
トラムに乗って 香港に暮らす人たちの
日常的な風景を見ていて、
ふと、思ってしまったのだ。
「私は、何時までこういった旅を続けていられるのだろうか・・・。」
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何年かに一度の海外旅行。
自分は若いつもりでも
周囲の反応は変わってくる。
日本にいる友人、知人もそうだが、
旅先で出会う人たちとの接し方も、
若い頃のように振る舞うわけにはいかなくなる。
若者ならば許されるようなことでも、
一端の大人がそれをやれば
年不相応と言われ、
非常識な人物との各印を押されてしまう。
そんなことを考えていると、
なかなか思い切った行動は取りづらくなってくる。
ただ無邪気に 旅から得る全ての刺激を受け入れていた若い頃と違い、
純粋に旅を楽しめなくなっている自分に気付く。
そして、そんな自分は毎年歳を取っていくだけで、
日常生活においても、何の成長もしていなければ、
そもそも何も内容のない人間なのではないか?
放っておくと そんなところにまで
思考が入り込んでしまったのだ。
もっと言うなら、
今の旅自体、以前経験した旅をなぞっているだけとも言えるし、
何なら 沢木耕太郎が若いころに経験した旅を
疑似体験しているに過ぎないのではないか・・・。
では、私にとっての旅とは
一体何なのだろうか・・・。
答えが出ないまま時間だけが過ぎ、
思考はぐるぐる回り続けて、
気が付くと いつの間にか夕方の時間帯になっていた。
元々昼寝をするつもりだったのだが、
色々なことが頭をよぎって
ほとんど眠ることは出来なかった。
それでも、少し横になって目を瞑っていただけで、
だいぶ頭の中はスッキリしたようだ。
「まずは行動してみることだ!」と、
夜の街に繰り出すことにした。

ホテルの目の前のネイザンロードから裏の路地に入り、
昨日とは逆のルートを取って、
廟街夜市の出店を冷かしながら
佐敦駅 の方へと南下していく。
いくつもの食堂が並ぶエリアを抜け、
天后廟の公園を突っ切って、
カラオケ屋台と占い小屋を横目に
再び出店の並ぶエリアに入った。
すると、どうだろう?
休憩を取ったことで
頭と身体が軽くなったこともあってか、
何故だか 世界が変わって見える。
出店に並ぶチープなオモチャや
バッタもののTシャツに目が行くようになり、
すべてが新鮮に見えてくる。
今まで流し見ていたものにも興味が湧いてきて、
普段なら見向きもしない
パチモンのキャラクターグッズの前で足を止めてみたりする。
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そうか!
私は 見えるものも見ないようにしていただけなのだ。
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睡眠不足による疲労からか、
それとも旅に対する慣れか、
好奇心が上手く働かず、
下らない玩具やコピー品に対しても
「どうせ いつもと同じでしょ?」と
高を括ってしまっていたのかもしれない。
よくよく観察すれば、
興味を引くものは無数にあったのだ。
ただ、話題の観光地に行ったという
アリバイ作りをしていただけで、
実際は何も見ていなかったのだ。
‶変わったのは、世界ではなく自分自身だった。″
陳腐なフレーズではあるが、
だからこそ芯を食っているとも言える。
やはり、疲労は人間をダメにするものだ。
心身の状態が悪いと
周りへの関心も無くなってきて、
何を見ても感動できなくなってしまう。
以前の長期旅行でも何度か経験したはずの
このモヤモヤした気分を、

久々の海外ということで
すっかり忘れてしまっていた。
要は、気持ちの持ちよう次第で、
まだ世界には楽しいことが
あちこちに転がっているのだ。
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そう思うと、沈んでいた気分も
一気に上がってくる。
この勢いで、昨日から目を付けていたレストランに
入ってみることにした。
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