人の本質 性( さが )
私の好きな映画に、『 クライングゲーム 』という作品があります。
( 1992年 イギリス制作、監督 ニール・ジョーダン )
その中のシーンの一つに、
人質になった黒人の英国兵士 ジョディ( 若き フォレスト・ウィテカー )が、
捕えている側の IRA メンバーの ファーガス( これまた若き スティーブン・レイ )に、
カエル と サソリ の寓話を話す場面があります。
以下 ジョディ のセリフ。( 意訳 )
人間は二つのタイプに分けられる。 サソリ型とカエル型だ。 ある時 川を渡りたがっているカナヅチのサソリがカエルに言った。 「 カエル君、僕を背中に乗せて川を渡ってくれないか? 」 カエルは答えた。 「 いやだよ。だって君は僕のことをその針で刺すに決まってる。」 サソリ「 バカをいうなよ。君を刺したら僕だって溺れてしまうんだよ。 絶対に刺したりしないよ。」 納得したカエルは、サソリを背中に乗せ川を渡り始める。 半分ほど渡ったところで、カエルは背中に激烈な痛みを感じた。 サソリに刺されたことを覚ったカエルは、溺れながら叫んだ。 「 サソリ君! 何故君は 自分も溺れると分かっていながら僕を刺したんだ!! 絶対に刺さないって約束したじゃないか!! 」 溺れ行くカエルの背中で、サソリは申し訳なさそうに こう答えた、 サソリ「 仕方がなかったんだ・・。これが僕の ‶ 性 ”だから・・・。」 * 性・・・原文では ‶ nature ”
だいたいこんな内容だったと思います。
その後 ファーガス は次第に ジョディ と打ち解けていき、
本来 敵同士の二人の間に 奇妙な友情が生まれ、
この後 二人の関係はどうなっていくのかと思っている矢先、
ちょっと容易には想像できない 突発的なハプニングによって、
二人の友情は急な終わりを迎えます。
いくつもの意外なプロットにより成り立つこの映画ですが、
この ‶ 性 ” = ‶ nature ” が、キーワードとして
主人公 ファーガス の行動に常に関わってきます。
彼は IRA という、
時には誘拐やテロ行為も辞さないグループに所属してはいますが、
本質は素朴で優しい青年で、
どこまで行ってもその ‶ 性 ” は変えられないのです。
彼のやさしさは、所属する組織からの圧力を超え
自分や世の中の常識、
最終的には ‶ 性 ”( ジェンダー )さえも超えて
我々 観る者に示され感動を与えます。
【 余談ではありますが、私はこの ‶ 性 ” という形で表出するやさしさに、
ものすごくヒロイックなものを感じてしまいます。
例えて言うなら、スターウォーズ EP4 で、
金にしか興味がないと言っていた ハンソロ が、
突然( お金にならないのに )ルーク を助けに舞い戻ってくる場面や、
シンドラー がさんざん文句を言いながらも
部下の イザック に時計を差し出す場面、
身近なところで言うと、
自分の気持ちを隠してヒロインと若い男の間を取り持つ
寅さんなどが当てはまります。
( 寅さんの場合 ただのやせ我慢とも言えますが・・・。 )
なぜかは分かりませんが、とにかくツボなんです。】
ジョディ は ファーガス の ‶ 性 ”( nature ) を見抜いていました。
それはもしかしたら、
何とか IRA から逃げ延びるための手段だったのかもしれませんが、
いずれにせよ ファーガス は ジョディ の約束を守ろうと行動し、
彼の元恋人に会いに行くことから
物語は思いもよらない結末へと進んでいきます。
それが彼、ファーガスの ‶ 性 ”( nature ) なのです。
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