英雄誕生譚
ポストアポカリプスの代表格と言えば
映画『 マッドマックス 』シリーズが挙げられる。
ジョージ・ミラー監督の出世作にして代表作で、
主演のメル・ギブソンを世界的スターに押し上げた作品だ。
( もう一つの代表作『 ベイブ 』は、
奇しくも同じ ‶ 動物 ” が主人公の作品だ。)
荒廃した近未来を、
主人公マックスが愛車のV8インターセプターを駆って
無法者たちをなぎ倒しながら、
時に復讐を果たし、時に困っている善良な人々を救っていく物語だ。
その斬新な世界観は 日本の漫画『 北斗の拳 』を初め、
映画『 ウォーター・ワールド 』、
ゲームでは前出の『 Fall Out 』シリーズなどにも影響を与えている。
ジョージ・ミラー監督は『 マッドマックス2 』を撮るに際し、
世界中の様々な神話や英雄譚を研究したと言われている。
( 特にアメリカの神話学者 ジョゼフ・キャンベルが書いた
『 千の顔をもつ英雄』に影響を受けたとされる。)
『 マッドマックス2 』以降最新作まで
主人公のマックスは、
( 最初の動機は違っていたとしても、)他者のために行動し、
そのコミュニティ、ひいては世界の勢力図に変革をもたらす
唯一の存在だ。
まさに ‶ 世紀末救世主 ” であり、
英雄誕生譚の典型とも言える。
これは『 Stray 』にも共通したテーマだ。
生まれた場所を出て 見慣れない場所に放り込まれ、
最初は苦労するが 色々な人物( ロボット )と出会い成長して、
世界( コミュニティ )を救い
また同じ場所( 元居た場所、境遇 )へと帰還する。
そして最後は一人( 一匹 )で去っていく。
主人公はそのコミュニティにおいては異質な存在で、
であるが故に社会に変革をもたらす存在となりえる。
ロボットしかいない世界での猫とは・・・
これは異質な存在以外の何物でもないだろう。
だが時に、異質なものこそが
革命を起こせるのだ。
B-12という存在
最期に ‶ みんな大好き ” B-12についても触れておきたい。
彼は作中 主人公と長い間行動を共にし、
様々なアドバイスや手助けをしてくれるバディであるのだが、
人間であった時代から本編最後のシーンまでの
数奇な人生に考えを巡らせてみると、
非常に哲学的な存在とも言える。
AIという存在になってまでも
人間に代わりロボットの住むこととなったこの世界を救おうと、
自分の人生を犠牲にしてまで尽力する B-12。
人工知能の発達や大容量メモリーの小型化、
iPS細胞やロボット義手、義足の実用化など、
存在の ‶ 成り代わり ” すら現実味を帯びてきた現代において、
人間の記憶を持ったままドローンとなった彼の存在は、
〈 人間の存在とは何か?〉という問いを
我々にリアルに投げかけてくる。
総評
シンプルにまとめられたストーリーとボリュームで、
短いながら濃厚なプレイ時間を提供する『 Stray 』。
単純で ‶ ベタな ” ストーリーだからこそ
ダイレクトに我々の心に訴えかけてくるものがあるし、
英雄誕生譚として馴染みのあるストーリー展開は、
主人公の猫に より親近感を覚えさせる。
( 思えば、日本人なら誰もが知る 桃太郎 などの民話も同じプロットだ。)
大作揃いのこの2022年において、
一本のインディゲーに収まらない
感動とインパクトを残してくれた 『 Stray 』。
開発元の Blue Twelve Studio には、
今回の成功に留まらず
更なるクオリティの作品を期待したいし、
他のインディゲームに携わる開発チームには、
『 Stray 』の成功を参考にして、
大手には出来ない新しい視点と発想の作品を
コンスタントに世に送り出して欲しいと
切に願うところだ。
〈 終わり 〉
この夏最高の 猫ゲー 『 Stray 』の購入はこちらから↓
https://www.playstation.com/ja-jp/games/stray/
- 2025年2月
- 2025年1月
- 2024年12月
- 2024年11月
- 2024年10月
- 2024年9月
- 2024年8月
- 2024年7月
- 2024年6月
- 2024年5月
- 2024年4月
- 2024年3月
- 2024年2月
- 2024年1月
- 2023年12月
- 2023年11月
- 2023年10月
- 2023年9月
- 2023年8月
- 2023年7月
- 2023年6月
- 2023年5月
- 2023年4月
- 2023年3月
- 2023年2月
- 2023年1月
- 2022年12月
- 2022年11月
- 2022年10月
- 2022年9月
- 2022年8月
- 2022年7月
- 2022年6月
- 2022年5月
- 2022年4月
- 2022年3月
- 2022年2月
世紀末ものの金字塔
ポストアポカリプスな作品たち
コメント