あの日のハリルジャパン Vol.3

ワールドカップ ハリルジャパン オーストラリア戦 サッカー
決戦を報じる当時の各メディア

2017 8月31日(木) 2018FIFAワールドカップ ロシア  アジア最終予選 日本 × オーストラリア

運命の後半戦

〈 弱者としての戦い方 〉

後半開始早々から、日本は前半の序盤同様

オーストラリアに激しいプレスを仕掛ける。

ハーフタイムでリフレッシュした為か

動き出しも良い。

前半終了間際に1点取って折り返せたことで、

精神的にも余裕がある状態で挑めているからだろう。

オーストラリアも焦る必要はないが、

早い時間に追いついておきたいところ。

球際の競り合いにも前半以上に気合いが入っているように見える。

そんなオーストラリアディフェンスを相手に、

CF大迫 は巧みなポストプレーで前線の起点となり

味方の攻め上がる時間を作る。

得点力に課題を持つ大迫だが、

このポストプレーを見れば、

ハリルが彼を攻撃の軸に据えている理由が分かる。


後半8分、日本は中盤でボールを奪い、

そのままの勢いでショートカウンター。

右サイドを攻め上がった SB酒井 から 中で待つ CF大迫 へのクロス。

これはディフェンスにカットされたが、

後半の日本の戦い方が見えた場面だった。


日本は1点リードしているので、

無理に攻め込む必要がない。

あえて主導権を手放し、

前線でボールを奪い 速い攻撃で追加点を狙う。

ごく当たり前の戦術のようだが、

今まで日本はこの当たり前が出来なかった。

近年の日本代表で信奉されているのは、( 特にアジア予選では )

ポゼッションサッカーであり、パスサッカーだ。

アジアではそれでも

相手を圧倒することが出来た。

しかし、世界に出ると、

逆に日本は攻め込まれる側になることもある。

もしくは、ボールを保持していても

持っているのではなく持たされているので、

相手に前線で引っ掛けられて速攻を受け、

守備をズタズタにされてしまう。

その最たる例が、

前回ブラジル大会のコロンビア戦だ。

( グループリーグ3戦目。日本が1-4で敗退。)

日本は、アジア予選での戦い方とW杯本選での戦い方、

二つのスタイルを模索する必要があるのだが、

そこにジレンマを抱えていた。

W杯前のテストマッチでいくら強い国と対戦しても、

相手が本気で戦ってくれるとは限らない。

プレッシャーも弱い分 意外に日本がボールを保持出来て、

善戦して引き分けたり、

あるいは勝ててしまうこともある。

しかし、本番ではそうはいかない。

先述のコロンビア戦の例にもあるように、

テストマッチと本番とでは、

戦いの強度が雲泥の差なのだ。

つまり、日本代表は 真剣勝負での強豪国との戦い方、

あえて言うならW杯本番用の ‶ 弱者の戦い方 ” を

習得する必要があるのだ。

その一端が垣間見えたのが

オーストラリア戦のこの場面だった。


後半10分、

右サイド深く切り込んだ WG浅野 が

中央へグラウンダーのクロス。

中で 左WG乾 が詰めるもディフェンスに当たってコーナーへ。

右からのコーナーを SB酒井 が頭で合わせるも、

ボールは遥か上空へ。

しかし、日本が押し込む場面が続く。

後半11分、日本のカウンター。

CF大迫 のポストプレーが左サイドの WG乾 に渡り、

広大なスペースを攻め上がった WG乾 が1対1からシュートを放ったが、

相手ディフェンダーが体を張ってブロック。

ボールは惜しくもゴールラインを割った。


後半16分、先にオーストラリアベンチが動く。

MFトロイージ に代えて、191cmの 長身FWユリッチ を投入。

本来はオーストラリアのエースで

今予選のチーム得点王だが、

直前の試合での怪我から 今日はベンチスタートだった。

いよいよオーストラリアが本気を出してくると、

会場含めサポーター全員が警戒心を抱いた場面だ。


後半18分、日本が右サイド深い位置からのフリーキックを得る。

MF井手口 のセンタリングは弾かれるが、

こぼれ球を SB長友 が山なりのシュート。

ドライブ気味の軌道で枠を捉えるが、

力が無く 相手GKライアン が難なくキャッチ。

続く後半19分には、

WG乾 が左サイドから得意のドリブルを仕掛けるも

最後のタッチが大きくなりゴールラインを割る。

それでもドリブルでの積極的な仕掛けは、

オーストラリアディフェンスの嫌がるところだ。


後半20分、久々にオーストラリアの攻撃。

右サイドに張る WBレッキー から中央の MFロギッチ へ。

左足のシュートは力が無く枠を外れる。

この時間帯、オーストラリアは前線に押し上げる力が足りていないように見える。

後半も半ばにして すでにガス欠気味の印象。

更なる選手交代で チームを活性化したいところだ。


後半24分、オーストラリアの攻撃。

右サイド深くで受けた WBレッキー がグラウンダーのクロス。

ゴール正面で FWクルーズ が合わせるも、

中に絞っていた SB酒井 の必死のブロックで

ボールはゴールラインを割る。

オーストラリア、右からコーナーキックのチャンス。

ここで、ついにポステコグルー監督が切り札を投入する。

MFロギッチ に代えて FWケーヒル。

日本キラーとして知られる37歳の大ベテラン。

180cmとさほど上背はないが、

抜群の跳躍力で繰り出されるヘディングも特徴の選手だ。

残り20分での総力戦。

果たしてどんなドラマが待つのか・・・。

試合は終盤へ。

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