
運命の45分(後半)①
【4】積極的な森保采配
後半に入る前に日本の森保監督は、
慣れない左サイドで守備に奔走していた ウィングの久保に代えて
センターバックの富安を投入。
システムを3バックに変え、
左右のサイドバックを前に出してウィングバックの位置に置き、
守備時にはマークをはっきりさせて
5バックでしっかり守ろうという意図が見える布陣。
前半 再三上がってきていたドイツの左サイドバック ラウムには
右ウィングバックの酒井が対応することで、
前線の伊東の守備の負担を減らす狙いもある。
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そんな効果もあってか、
49分、
右サイドからカットインした WG伊東がペナルティエリア内に侵入。
ディフェンダーに体を当てて止められるも、
こぼれたボールを MF鎌田がダイレクトでシュート。
これはディフェンスに当たってコーナーキックになるが、
早くもシステム変更の効果が出始める。
51分、ドイツの攻撃。
左サイドからペナルティエリア付近でボールを受けた MFムシアラが
巧みなステップでディフェンス4人をかわしてシュート。
これはバーの上に外れるが、
流石はドイツの将来を背負う逸材。
そのポテンシャルを感じさせるプレーだった。
57分、
日本ベンチが大きく動く。
長友 に代えて MF三苫。
前田 に代えて FW浅野を投入。
前田はファーストディフェンダーとしての役割をきっちりとこなし、
御役御免と言ったところ。
三苫には攻撃面での活性化が求められる。
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交代早々、
早速 日本にチャンスが訪れる。
右WB酒井からのボールを中央で受けた FW浅野が
右サイドを走る WG伊東にパス。
伊東は得意の速いクロスをニアサイドに上げ、
これに飛び込んだ浅野がヘッドで合わせるが、
マークに付いてきていた DFリュディガーに体を入れられていたこともあり、
ボールはニア・サイドに大きく外れる。
しかし、伊東のクロスの精度と、
浅野のスピードが活きた場面だった。
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交代出場の浅野拓磨は不思議な選手だ。
その圧倒的なスピードは海外でも評価される一方、
フォワードとしての決定力の無さは
常に批判の対象となってきた。
しかし 意外と言ったら本人には失礼だが、
ここぞという大事な場面で得点を上げることが多く、
そのどれもがスーパーゴールであることは
あまり言及されることがない。
例えば、リオ五輪アジア最終予選決勝で
韓国を相手に上げた、
逆転勝利を呼び込む2ゴール。
前回 ロシア・ワールドカップへの出場を決めた、
アジア最終予選 ホームのオーストラリア戦での
先制ゴール。
いわゆる ‶持っている選手″であるはずなのだが、
そういった印象を持つサポーターの声は
あまり聞かない。
これは普段それだけビッグチャンスを外しているので、
そのマイナスイメージが定着してしまっている影響かもしれないが、
それだけチャンスに絡んでいるという証左でもあることは
あまり認知されていない。
大きな舞台でこそ輝くのが
本物のスターというものだ。
60分のドイツ。
左サイドでのパス交換から
MFムシアラがカットイン。
CB吉田が対応するも、
横からフリーで上がってきた MFギュンドアンにボールが渡る。
ギュンドアンの狙いすましたグラウンダーのシュートは
枠を捉えるも、
右ポストに弾かれゴールならず。
ドイツに後半初の決定機を与えてしまう。
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61分、日本のカウンター。
中央でフリーになった MF鎌田から
左を並走する FW浅野にラストパス。
浅野は体を寄せてくる CBリュディガーが追い付くより一瞬早く
左足でシュートを放つが、
ボールは枠を大きく逸れる。
ドイツ中盤の運動量の低下もあり、
この辺りから日本も良い形でのカウンターが増え始める。
64分、
日本は右サイドでの崩しから
前線の FW浅野にスルーパス。
右のタッチライン際でボールを受けた浅野は、
マークする CBリュディガーを 得意のスピードでぶっちぎろうとするが、
スピードでは負けていないリュディガーが体を入れ、
ボールはタッチラインを割る。
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この時の リュディガーの浅野に対するディフェンスでの対応が
当時日本国内でも話題となった。
浅野に振り切られることなく追いついたリュディガーは、
手足を大きく振った煽るような仕草で、
まるで練習試合のようにおどけて振る舞ったのだ。
いわゆる ‶舐めプ″(舐めたプレー)というやつだ。
まるで 「お前の自慢のスピードなんて、俺には通用しないよ!」
とでも言わんばかり。
必死で食らいつこうとする相手に対して
余裕を見せるための行為なのかもしれないが、
相手からすると
あまり気持ちの良いものではない。
こういった行為は得てして
後からしっぺ返しを喰らうものだが、
10数分後、
彼は嫌と言うほどそれを思い知ることになる。
66分、
中盤の組み立てに参加していた 左CB富安から
ペナルティエリアに侵入した FW浅野にスルーパス。
走りこんだ浅野は左足でシュートを放つも、
これも CBリュディガーにブロックされる。
リュディガーもスピードでは負けていないのだろうが、
神出鬼没に動く浅野の動き出しに
少し手を焼いている様子。
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67分、ドイツも二人の選手交代。
中盤の ミュラーとギュンドアンに代えて、
MFホフマン と運動量に優れる MFゴレツカを投入。
そしてこの後、日本にこの試合最大のピンチが訪れる。
【5】ゴールキーパー 権田の執念
70分、
ペナルティエリア付近でボールを受けた MFキミッヒの浮き球のパスに
MFニャブリが反応。
ゴール前で抜け出すもシュートへの角度が無かったため、
横にいる MFホフマンにボールを預ける。
ホフマンはシュートを放つが、
GK権田が体を張ってセーブ。
更にこぼれたボールをニャブリが左足で狙うも、
再び権田が弾き出す。
ボールは再びドイツ選手の元へ。
日本の右サイド深くに展開され、
中央へのクロスに合わせたのはニャブリ。
高い跳躍からのヘディング・シュートは、
セオリー通りキーパーの手前でバウンドさせるものだったが、
ボールの勢いは若干弱く、
三度権田がセーブ。
こぼれ球に自ら素早く反応したニャブリが
4度目の正直で右足のシュートを放つが、
これにも権田が即座に反応し、
ボールはやっとタッチラインを割った。
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4度のビッグチャンスを
ことごとく防ぎ切った権田。
まさに鬼神の極く立ちはだかるこの日の権田には、
会場のサポーターだけではなく、
日本から応援する国民の想いが乗り移っているかのようだった。
海外に所属する選手がほとんどとなった
近年の日本代表において、
実は最も不安視されていたのが
ゴールキーパーのポジションだ。
今でこそ 鈴木彩艶 始め、海外で活躍する選手も
増えてきてはいるが、
日本人の小柄な体格の影響もあってか、
フィールドプレーヤーに比べて
ゴールキーパーが海外で成功した事例は、
当時まだまだ少なかった。
唯一 フランスなどで活躍し経験豊富な川島も、
今回はサブのキーパーとして
試合には出場していない。
1点目の失点も、権田だけの責任ではないが、
もう少し落ち着いていれば防げていたかもしれない失点。
権田の海外でのプレー経験の無さは
不安材料の一つではあった。
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しかし、同じ試合の後半で、
これだけの獅子奮迅の活躍を見せられては、
自分の審美眼が誤っていたのだと
認めざるを得ない。
そんなことさえ思わせられる
歴史に残るビッグセーブだった。
直後の71分、
日本は ボランチの田中碧に代えて MF堂安を投入。
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73分、
日本のビッグチャンス。
中盤から MF遠藤のロビングのパスを
ペナルティエリア内で WG伊東が受けて
右足でシュート。
GKノイアーが弾いたところに 右SB酒井が詰めるも、
シュートは大きく枠を逸れる。
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74分、
日本は右足を負傷していた酒井に代わり、
MF南野を投入。
ここから日本の反撃が始まる。
【6】遂に同点!カルテットの相乗効果
75分、
左サイドのタッチライン際でボールを受けた WB三苫が
ドリブルでカットイン。
シュートを警戒するドイツディフェンス陣の不意を突き、
入ったばかりの FW南野にスルーパス。
南野の鋭い抜け出しに、
カバーに入った DFリュディガーの対応が少し遅れた。
その隙に南野が振り返りざまの鋭いクロス。
ファーに走っていた FW浅野に届く前に
GKノイアーが懸命に左手を伸ばし 一旦は弾くも、
ゴール前に詰めていた WB堂安が
得意の左足で豪快にボールをネットへ突き刺す!
日本が遂に同点に追いついた。(1-1)
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体調不良でスタメンから外れていた三苫だが、
ここ一番で大きな仕事をやってのけた。
三苫がボールを持つことで
ドイツディフェンスは彼に引き付けられ、
それによって様々な相乗効果がもたらされる。
直前の選手交代で、
ドイツのディフェンスが日本の攻撃陣のマークを
掴み切れていなかったのも影響していた。
三苫の個人技がディフェンスを引き付け、
南野が裏抜けをし、
浅野が鋭く詰めることで
ノイアーはボールを弾くしかなかった。
そしてそれをしっかりと決めきる
堂安の決定力。
4人のストロング・ポイントが凝縮された
素晴らしいゴールだ。
しかも、4人ともが後半から投入された選手たち。
森保監督の積極的な采配が 見事に実を結んだ結果だ。
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強豪のドイツを相手に
残り15分の時点で 1-1 。
このままのスコアで終了していても、
日本にとっては十分及第点と言って良かった。
だが、この日の日本は違った。
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ここから更にゲームは白熱していく。

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