エリー を操作するということ
*以下『 ラスアス1 』『 ラスアス2 』のネタバレを含みます。
ゲームでは、しばしば強制イベントというものがあります。
プレイヤーが何らかの操作をしなければ
( 時にプレイヤーがその行動を望んでいなくても、)
ゲームが進行しない場面のことです。
これは、その後のシークエンスに必要なデータに移行するためのポイント という
ゲームのシステム的な側面もありますが、
しばしば物語を進めていく上で、
( たとえ強制的だったとしても、)
それが【 自分が決断した選択 】だ という認識を持たせる、
ゲームならではの効果を生み出す要素として使われています。
昨今のシナリオ重視のゲームでは、意図的にこれを配置し、
物語への没入感を高めていると言ってもいいでしょう。
思い返せば、『 ラスアス1 』の最後、エリー を助けるために
一人目の医師( アビーの父親 )を殺害する場面も強制イベントでした。
( これをうまく利用して続編『 ラスアス2 』のストーリーは作られています。
これが選択可能なイベントであったなら、
アビー の父親を殺害しなかったプレイヤーも出てきて、その人にとっては
ジョエル が身に覚えのない罪で復讐されることになってしまいます。)
『 ラスアス2 』においても
印象的な と言うよりも、
トラウマ級の強制イベントがいくつか存在します。
その中で、まずみなさんが思い浮かべるのが、
エリー が WLF( ウルフ )のメンバーで、ジョエル殺害の実行犯の一人である
ノラ を拷問する場面ではないでしょうか。
病院に潜入し、ノラ を追い詰めた エリー は、
主犯格である アビー の居場所を聞き出すべく
すでにウィルスに感染しつつある ノラ に、
仲間を庇って苦痛を味わいながら死ぬか、
アビー の居場所を言って苦痛を感じず楽に死ぬか の選択を迫ります。
( この2択の怖いところは、どちらにしても
ノラ には助かる道がないというところです。)
二人のやり取りのムービーシーンが続くなかで、
エリー の憎しみの感情が頂点に達したところで
エリー の顔の横に、突然□ボタンが表示されます。
ここで我々は、これがただのムービーシーンではなく
プレイヤーが直接関与する 強制イベントであることに気付きます。
ストーリーを進めるためには□ボタンを押さなければならず
私たちは半ば無理矢理 エリー が振るう暴力を
疑似体験することになるのです。
「 いくら ジョエル の仇を打つためとはいえ、
そこまでやる必要があるのか・・・。」
ほとんどのプレイヤーがそう思いながら
□ボタンを押したことだと思います。
これこそが映画や小説にはない、
ゲームだからこそ表現可能なリアルなキャラクター心理の疑似体験であり、
ある意味で我々は エリー と共犯関係を結ぶことになるのです。
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