
四つ巴の極上のエンターテインメント(後半)②
【8】目まぐるしい展開
70分、日本の攻撃。
CBロドリが右サイドのウィング、WGフェラン・トーレスに出したパスを、
左サイドで守備に奮闘していた WB三笘がカット。
そのままの勢いで左サイドを駆け上がり、
カバーに入った 右SBカルバハルを一瞬で置き去りにする。
スペイン陣内に侵入すると、
ゴール前に走りこんだ CF浅野に
グラウンダーのクロス。
走りこんだ浅野は右足で合わせるも、
ボールは枠の外へ。
慣れないウィングバックでの守備に加えて、
いざボールを奪えば、その推進力を存分に活かして
ほぼ一人で決定機を生み出す三笘の個の強さには、
改めて驚かされる。
決勝ラウンドへの進出を賭けたこの試合。
他会場で同時進行で行われている ドイツ対コスタリカ戦の結果によっては、
日本だけでなく、
スペインの戦い方も変わってくる。
72分、
他会場で行われている試合で、
何とコスタリカが
ドイツに対して1点のリードの情報が入る。(ドイツ1-2コスタリカ)
・・・・・・・・・・・・・・・
72分時点での順位予想
勝ち点 得失点差
① 日本 6 +1
② コスタリカ 6 -5
③ スペイン 4 +6
④ ドイツ 1 -2
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日本はこのままスペインに勝てば
文句なしの通過となるが、
スペインは負けてしまうと
勝ち点でコスタリカに届かず、
グループリーグ敗退となってしまう。
逆に日本が引き分けた場合、
スペインの勝ち点が5、日本が4となるため、
スペインは2位通過、
日本は3位で敗退となる。
つまり、次に日本が失点してしまうと、
日本は決勝トーナメントに進出できないという状況。
絶対に得点を奪いたいスペインと、
絶対に失点させたくない日本。
コスタリカの意外(?)な奮闘ぶりが、
グループEの結果を大きく左右することとなった。
負ければ後のないスペインは、
センターバックの CBロドリ、CBパウ・トーレスまでが高い位置を取り
前線にボールを供給。
しかし、日本は押し込まれながらも
簡単には有効なスペースを与えない。
74分、
再び他会場に動きがあった。
今度はドイツが追い付いたとの報。(ドイツ2-2コスタリカ)
・・・・・・・・・・・・・・・
74分時点での順位予想
勝ち点 得失点差
① 日本 6 +1
② スペイン 4 +6
③ コスタリカ 4 -6
④ ドイツ 1 -1
・・・・・・・・・・・・・・・
こうなると スペインはこのまま負けても
2位通過となるが、
仮にコスタリカがまた勝ち越した場合、
敗退が決まってしまう。
日本は同点とされてもコスタリカと勝ち点で並ぶため、
得失点差での通過が可能。
ただし依然として油断はできない状況。
目まぐるしく順位が変動する展開に、
見ている我々も気が気ではない。
75分、スペインの攻撃。
左サイドでボールを受けた SBジョルディ・アルバが
MFぺドリとのワンツーで抜け出そうとするが、
WB富安がしっかりと身体を入れて
ボールはタッチラインを割る。
大柄ながらスピードのある富安は、
所属クラブでも右サイドバックの経験があり、
やはり日本にとってなくてはならない存在だ。
富安が入ることで日本のディフェンスラインは安定し、
それによって 前にいる MF堂安、MF伊東の攻撃力も活きる。
ここにきて、日本の勝利に向けた
全てのピースが揃ったような感じだ。
【9】スペイン最後の反撃
最後の波状攻撃を仕掛けるスペインにより、
自陣ゴール前に釘付けとなる日本。
ボールを奪ってもすぐにスペインに回収されてしまい、
なかなか自分たちの時間が作れない。
・・・・・・・・・・・・・・・
81分、スペイン。
CFアセンシオとのワンツーでPA内に侵入するFWアンス・ファティだが、
ここも下がってきた WB富安が対応。
決定機を与えない。
84分、日本が久々に良い形を作る。
自陣で奪ったボールを WB富安→MF守田と繋ぎ、
前線の CF浅野に預ける。
楔に入った浅野のキープから再びボールを受けた守田が、
相手陣内まで大きくボールを持ちだす。
これに反応した CBロドリだったが、
一瞬対応が遅れたため、
身体を入れて守田の攻め上がりを阻止する。
これは明らかなファールに見えたが、レフェリーの笛は鳴らず。
こぼれたボールに反応した WG伊東が追い付くも、
カバーに入った SBカルバハルによって防がれてしまう。
CBロドリのプレーは明らかなファールで、
カードをもらってもおかしくなかったが、
レフェリーはそのまま試合を続行。
日本にとっては 再び我慢の時間帯が続く。
87分、日本最後の選手交代。
この日殊勲の勝ち越しゴールを上げた田中碧を
ここで下げる。
森保監督 最後のピースは MF遠藤航。
試合をきっちりと終わらせるクローザーの役割を、
対人能力に優れた遠藤に託す。
・・・・・・・・・・・・・・・
と ここで、他会場の試合に動きがあった。
ドイツが追加点を上げ、
コスタリカ相手に逆転に成功。(ドイツ3-2コスタリカ)
・・・・・・・・・・・・・・・
74分時点での順位予想
勝ち点 得失点差
① 日本 6 +1
② スペイン 4 +6
③ ドイツ 4 ±0
④ コスタリカ 3 -7
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これは得失点差で余裕のあるスペインにとっては朗報。
仮にこの試合に負けても2位通過が決まる。
しかし、日本にとっては
穏やかではない。
もしここで失点を許してしまうと
ドイツとの得失点差での勝負となり、
これも並んだ場合は
総得点の多い方、
つまりドイツが勝ち上がってしまう。
(この時点での総得点はドイツが 5、日本が 4。)
つまり、日本は何が何でも
勝たなければならない。
CFモラタに代わった FWアセンシオだが、
この時間帯、右サイドの FWフェラン・トーレスと
ポジション・チェンジをして
右サイドに張ってボールを受けるようになる。
彼の左足でのクロスや、
強烈なシュート力を活かす狙いだろう。
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89分、
その WGアセンシオが右サイドからカットインし、
ペナルティエリアの外から
強烈な左足のシュートを放つ。
直前でバウンドするボールを GK権田が弾いたところに
CFフェラン・トーレスが詰めるが、
CB吉田が間一髪でクリア。
これを拾ったスペインは、
中盤の位置まで上がっている CBロドリへ繋ぐ。
ロドリから縦に出たボールを
WGダニ・オルモが中央にいる CFフェラン・トーレスとの
見事なワンツーで抜け出す。
右のゴールエリア付近から放たれたシュートは
対峙する GK権田の脇の下を抜けるかに思われたが、
権田これを鋭い反応でキャッチ。
見事に決定機を防いだ。
ここで、後半の45分は終了。
残すは アディショナル・タイムのみ。
その アディショナルタイムは・・・、
何と 7分!!!
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今大会、以前の大会に比べて
アディショナル・タイムの長さも注目されているところだが、
これは元日本代表 本田圭佑氏でなくとも叫んでしまうほどの
痺れる展開だ。
他会場にて、ドイツが追加点を上げる。
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91分時点での順位予想
勝ち点 得失点差
① 日本 6 +1
② スペイン 4 +6
③ ドイツ 4 +1
④ コスタリカ 3 -8
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これにより、日本がもし引き分けると
得失点差でもドイツに抜かれるため、
日本のグループリーグ敗退は変わらないが、
スペインとしては、
コスタリカの敗退が濃厚となったため、
このまま負けたとしても
2位通過はほぼ確実となった。
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そんな他会場の様子を知ってか知らずか、
スペインは攻撃の手を緩めない。
日本は1トップの CF浅野だけを前線に残し、
自陣ペナルティエリア付近にブロックを作って
スペインの猛攻に対応するが、
守備に奮闘する余り 攻め上がる時に人数をかけられず、
ほぼスペインのハーフコート・ゲームのような状況。
90+6分 のスペイン。
後半途中から高いポジションを取りボールの供給役に回っていた
CBロドリからのパスを受けた WGダニ・オルモが
ペナルティエリアの外から右足でシュートを放つも、
力ない弾道は ゴール左に外れてしまう。
90+7分、
スペイン 左サイドから SBカルバハルが上げたクロスを
WB富安がブロック。
これを拾った MF遠藤が大きく蹴り出す。
大きき弧を描いて落ちてくるボール。
スタジアムは 白熱した試合展開からか、
異様な雰囲気に包まれている。
一瞬の静寂の後、
レフェリーの長い笛が吹かれた。
ゲームセット。
日本が強豪スペインを逆転、
2-1で下した瞬間だ。
ベンチからはサブのメンバーがピッチに飛び出す。
ピッチで両手の拳を上げて歓喜する選手たち。
沸き立つ日本のサポーター。
遂に日本が ワールドカップにおいて、
初めて2大会連続での
グループリーグ突破を決めた。
(今までは一大会おきにグループリーグ突破と敗退を繰り返していた。)
しかも強豪国 ドイツ、スペインを下しての
価値ある1位通過。
日本サッカー史に燦然と輝く偉業と言っても
言い過ぎではないだろう。
【10】見たことのない舞台への挑戦
勝因はいくつもあった。
前半の終盤以降、
失敗を恐れず前からプレッシャーをかけるようになり、
その流れのまま後半に入って
一気に逆転まで持って行った選手たちの奮闘ぶり。
コスタリカ戦では空回り気味だった
後半頭からの積極的な選手交代を、
続くこの試合でも怯むことなく遂行した
森保監督の英断。
特に今大会目立つのが、
途中から入った選手の活躍だ。
この試合も、途中出場の堂安と三笘が
それぞれ得点に絡む大仕事をやってのけ、
富安は ある意味で守備でのジョーカーのような存在として、
ドイツ戦に続き そのユーティリティぶりを存分に発揮した。
特筆すべきは堂安。
この日の得点で大会2得点目。
時にビッグマウスとも取られがちな発言で
批判されることもあるが、
そういった否定的な声も
自分自身へのプレッシャーとして受け止め、
大きな力に変えてプレーしているのが見て取れる。
そんな堂安が、
自ら「チームを引っ張っていくんだ!」という覚悟が見える
素晴らしい同点弾だった。
一方 田中碧の2点目は、
色々な意味で エポック・メイキングなゴールとなった。
一旦はゴールと判定されるも、
VAR判定となったゴール直前のシーン。
タッチラインぎりぎりのところで三笘が折り返したボールは
当初 完全にラインを割ったかに思われた。
(当初、画面越しに見ていた私も割っていると思った。)
しかし、ピッチ上空からの映像などで見てみると、
確かにボールは わずか1ミリほどではあるが
ラインにかかっており、
ルール上明らかな インプレー。
試合中、試合後、
様々なメディアで検証されたが、
後に各メディアによって
‶三笘の1ミリ″と呼ばれることとなった。
何とも洒脱な呼び方だが、
‶ドーハの悲劇″‶ジョホールバルの歓喜″といった
少し大仰な呼び方を好むサッカー界にとっては、
まさにエピックなゴールだった。
よく〈奇跡の1ミリ〉などとも言われる。
確かに起きた事象としては奇跡だが、
これは現代において、
VARのようなテクノロジーが発達したが故に
生まれたゴールだ。
今までであれば取り消されていた
幻のゴールであったことを考えると、
テクノロジーの進歩が奇跡を生み出すこともあるのだと
感心させられてしまう。
さて、見事にグループリーグを突破した
日本代表だったが、
次に立ちはだかるのは、
前回大会のMVPにして その年のバロンドーラー、
ルカ・モドリッチ率いる クロアチア。
前回大会の準優勝国ではあるが、
主力が高齢化してきており、
ドイツ、スペインを破った今の日本であれば、
戦えない相手ではない。
・・・・・・・・・・・・・・・
4日後に行われた試合は、
これまた壮絶な展開となる。
日本代表にとって、
今までに見たことのない景色(ベスト8進出)まで
あと一つと迫っていた。
~ 続く ~

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